競艇の展開予想をデータで作る|「差されやすい」「まくられやすい」を24万レースで数値化してAI予想に組み込むまで

競艇(ボートレース)の予想でよく聞く「この1号艇は差されやすい」「2コースの壁が強いから逃げる」「3コースのまくりが怖い」。 こうした展開の読みは、これまで経験や感覚で語られることがほとんどでした。

AI予想サイト「TAKENOKO BOAT」では、この展開の読みを公式データで数値にして、予想に使えるかを一から確かめました。 この記事では、そのとき調べたこと・分かったこと・できなかったことを、順番にまとめます。

先に結論を書くと、選手ごとの「差されやすさ」「まくられやすさ」は数字でかなり安定して測れます。

それを使った展開予想(逃げ・差し・まくり・まくり差しの確率)は、決まり手の予想ではAI本命モデルより確実に良くなりました。

一方で、「誰が1着になるか」はAI本命モデルがすでにほとんど分かっていて、上乗せは小さいことも分かりました。

この記事でわかること

  • 選手の「差されやすい」「ターンミスが多い」などは、公式データからどこまで取れるか
  • 選手タグ(ST・安定・道中・差され・捲られ・事故多い・無事故無違反)の作り方
  • 24万レースで見た、逃げ・差し・まくり・まくり差しの割合と、コース別の「攻め」と「守り」
  • 同じ逃げ率でも「何で負けるか」が違う選手がいること
  • 展開予想AIを作るときに、未来のデータを混ぜないための工夫
  • 展開予想はどこまで当たるのか、AI本命モデルと比べてどこが良くなったか

きっかけ:短評や選手の特徴を、データで作れるか

最初の問いはシンプルでした。

  • 道中で順位を上げやすい選手、下げやすい選手は分かるか
  • 自損事故が多い選手はピックアップできるか
  • 差されやすい、膨らみやすい、ターンミスが多い、安定感がある——は分かるか

予想紙の短評のような情報を、推測ではなく、記録された事実だけから作れるかを確かめることにしました。

公式データで取れるもの・取れないもの

ボートレース公式の競走成績(2021年〜)と出走表、直前情報を調べた結果です。

知りたいこと取れるか中身
決まり手○逃げ・差し・まくり・まくり差し・抜き・恵まれ。1着の艇にだけ付く
進入コース・スタートタイミング(ST)○全艇。99.8%で記録あり
着順・レースタイム○全艇
事故(区分)○フライング・出遅れ・欠場・失格(選手責任外/選手責任/妨害)
事故の種類(転覆・落水・エンスト)△公式結果ページの備考から。2026年9月からためている
道中の順位(1周目・2周目)×公式データに無い
ターンミス・膨らみ×記録が無い
選手のコメント△他サイトの転載はしない方針。今後、自前で記録してためる

道中の順位とターンミスは、公式データには記録がありません。 そこで「無いものは作らない」と決め、記録された事実から分かる範囲に絞りました。

  • 道中で順位を上げる力 → 「進入コースとSTの順位から見込まれる着順」と「実際の着順」の差で代わりに測る
  • 膨らみ・ターンミス → 推測では作らない(タグにしない)

選手タグ:事実だけで作る選手の特徴

取れるデータから、選手ごとに次のタグを作りました。どれも全選手の中での位置で決めていて、性格や調子の評価ではありません。

タグ何を見ているか期間
ST ◎○△×平均スタートタイミング直近1年
安定 ◎○△×着順のばらつき直近1年
道中 ◎○△×見込みの着順より上がったか下がったか直近1年
差され1コースで、差しの艇に負けた率が高い直近2年
捲られ1コースで、まくりの艇に負けた率が高い直近2年
事故多い選手責任の事故(失格・フライング・出遅れなど)が上位15%かつ3回以上直近3年
無事故無違反事故0回で150走以上直近3年

記号は「上位10%が◎、上位25%が○、下位10〜25%が△、下位10%が×」。真ん中の50%には何も付けません。 出走数が少ない選手は全国平均に寄せて計算するので、数回の結果でタグが付いたり外れたりしにくくしています。

あわせて、レース結果には事実だけの短評を付けました。たとえば「1着は2号艇(4コース・まくり)。トップSTは2号艇(.11)。事前の1着率トップは4号艇で、結果は2着」のように、記録から言えることだけを書きます。

展開を数字にする:24万レースの基礎集計

ここからが本題の「展開」です。2022年1月〜2026年8月の通常のレース(事故・フライング・欠場のあったレースを除く)240,351レースを集計しました。 決まり手は進入コースに対して付くので、すべて枠番ではなく実際の進入コースで数えています(21%のレースで進入が入れ替わるため)。

決まり方割合
逃げ53.2%
まくり15.5%
差し12.7%
まくり差し11.8%
抜き6.8%
1-2(1コース1着・2コース2着)19.2%
1-*-2(1コース1着・2コース3着)12.4%

逃げの割合は場によって41〜61%、風が7m以上だと43%まで下がります(風が弱い日は56%)。

攻めた艇だけでなく、「通した艇」にも記録を付ける

決まり手は1着の艇にしか付きません。でも、4コースがまくって勝ったなら、1〜3コースの艇は「外からの攻めを止められなかった」ことになります。 そこで、1着の艇より内側にいた艇すべてに「被まくり」「被差し」などを連帯責任として記録しました。

コース1着率被まくり被差し被まくり差し
155.8%15.5%12.7%11.8%
213.5%11.9%4.0%11.8%
312.5%6.8%2.6%7.1%
410.5%1.9%0.6%4.4%

2コースには「壁」の役割もあります。1コースが逃げたとき、2コースが2着に残るのは34.1%、3着以内に残るのは56.6%でした。

選手ごとに測れるか:再現性のチェック

選手ごとの数字が、たまたまの結果ではなくその選手の特徴と言えるかを確かめました。 各選手のレースを無作為に半分に分け、両方の半分で同じ数字が出るか(相関)を見ています。1に近いほど、その選手らしさを安定して測れています。

コース指標相関使えるか
1コース逃げ率0.88◎
1コースまくられ率0.72○
1コース差され率0.66○
2コース差し率0.62○
2コース壁(逃げのとき2着に残る率)0.60○
3コースまくり率0.57○
4コースまくり率0.68○
3コース差し率0.19×(発生が少なすぎる)
1コース逃げたとき2コースが残る率0.12×(1コースの選手の特徴ではない)

選手は1コースだけでも中央値で134走あり、どのコースも約1,500人が50走以上走っています。多くの指標は、選手の特徴として十分に測れることが分かりました。

同じ逃げ率でも「負け方」は違う

1コースの逃げ率がほぼ同じ(64%台)2人の選手の例です。

1コースの出走逃げ率差され率まくられ率まくり差され率
選手A207走64.6%4.2%19.0%7.2%
選手B216走64.3%10.8%3.9%14.6%

選手Aは外からまくられて負け、選手Bは内を差されて負けるタイプです。同じ「逃げ率64%」でも、相手の艇によって危ない展開がまったく違うことが分かります。

組み合わせると、展開の起こりやすさが大きく変わる

2022〜2024年の数字だけを使って、2025年以降のレースで確かめました。

組み合わせ起きること下位25%上位25%
1コースの差されやすさ × 2コースの差し2コースの差しで1着3.8%15.1%
2・3コースのまくられやすさ × 4コースのまくり4〜6コースが1着13.3%23.4%
1コースの差されやすさ差しで決着7.0%18.8%
4コースのまくり率4コースのまくり系で1着4.3%11.9%

「1コースが差されやすく、2コースが差し上手」のレースでは、2コースの差しが約4倍起きやすくなっていました。

展開予想AIを作る:未来のデータを混ぜない

次に、これらの数字を使って展開予想AIを作りました。予想するのは「何コースが、どの決まり手で勝つか」の11区分です(1逃げ、2差し、2まくり、3まくり、3まくり差し、3差し、4まくり、4まくり差し、4差し、5・6コース、抜き)。 そこから、逃げ・差し・まくり・まくり差しの確率を出します。

予想モデルの検証で一番気をつけたのは、未来のデータを混ぜないことです。

  • 選手の数字は、そのレースの日より前のレースだけで作る(同じ日のレースも使わない)
  • 窓は1コースが過去2年、2〜6コースは過去1年
  • レース前には進入コースが分からないので、枠番どおりに入るとして計算する(答え合わせだけ実際の進入で行う)
  • 風と波は結果と一緒に記録される値なので使わない
  • 学習は2024年1月〜2025年6月、調整は2025年下半期、最終確認は2026年1〜8月(35,082レース)

いくつかのレースで、計算した数字を手で数え直して、同じ日のレースが混ざっていないことも確かめました。

結果:展開予想で決まり手の予想は確実に良くなった

AI本命モデル(Champion)の予想だけから決まり手を割り振ったものと、展開の数字を足したものを比べました(2026年1〜8月)。 数字は「予想の誤差がどれだけ減ったか」です。

予想するもの実際の発生率誤差の減り方確実に改善したか
まくり15.7%−1.25%○
差し12.0%−0.57%○
まくり差し12.2%−0.45%○
逃げ53.6%−0.36%○
外艇(4〜6コース)1着18.1%−0.39%○
内側の崩れ22.8%−0.16%×(誤差の範囲)

「1%」は小さく見えますが、AI本命モデルが決まり手について縮められた誤差に対して、まくりで23%、まくり差しで19%、差しで13%を上乗せした計算になります。 しかも、荒れたレースほど改善が大きく(まくりの改善は、堅いレースで−0.96%、一番荒れるレースで−2.19%)、2025年下半期と2026年の両方で同じ向きでした。

予想確率の高いレースを選べるかも見ました。予想確率の上位10%のレースでの実際の発生率です。

全体AI本命モデルだけ展開の数字を足した場合
まくり15.7%34.0%36.1%
差し12.0%24.8%26.9%
まくり差し12.2%21.0%23.2%

一方で、誰が1着になるか(逃げ・外艇1着)は、AI本命モデルがすでにほとんど織り込んでいました。展開の数字は「誰が勝つか」より「どう勝つか」に効く、というのが一番の発見です。

展開予想の実装:まずは検証の枠で毎日記録

いきなり本番の予想を変えず、まずは検証の枠で毎日記録するところから始めました。

  • 毎晩0時半に、その日の全レースの展開予想を締切前に1回だけ記録(あとから書き換えない)
  • 夜に結果と突き合わせ、検証ページで公開

公開運用の初日(2026年9月12日)までさかのぼった2,790レースでは、予想の確率と実際の発生率がよくそろっていました。

まくりの予想確率実際のまくり発生率レース数
20%未満10.9%2,041
20〜30%21.0%491
30〜40%33.2%196
40%以上43.5%62

予想確率が高いレースほど、実際にまくりが多く起きています。

1レース1画面の「競艇新聞」へ

最後に、AI本命モデル・直前の展示による補正(Neo)・展開予想を、1レース1画面で見られる予想ページ「競艇新聞」にまとめました。

  • 最終評価:AI本命モデルの1着率に、直前の展示による補正を当てた値(例:Champion 35% → Neo +7 → 42%)
  • 補正の理由:「展示↑」「普段比↑」「モーター↓」のように短く
  • 展開予想:逃げ・差し・まくり・まくり差しの確率と、「逃げ本線/4号艇まくり注意」のような見出し
  • 艇ごとの展開タグ:「逃げ△」「まくられ△」「まくり◎」など
  • 買い目:公開している買い目(今までと同じルール)

展開予想はあくまで「どう決まりやすいか」の目安で、勝率に足し込んではいません。「誰が強いか」と「どう決まるか」を分けて並べることで、一目で比べられるようにしました。

まとめ

  • 道中の順位やターンミスは公式データに無いため、記録された事実だけで選手の特徴を作った
  • 1コースの逃げ率・差され率・まくられ率、2コースの壁、3・4コースのまくり率は、選手ごとに安定して測れる
  • 同じ逃げ率でも「まくられて負ける選手」と「差されて負ける選手」がいる
  • 攻める側と守る側の組み合わせで、展開の起こりやすさは約1.8〜4倍変わる
  • 展開予想AIは、決まり手(とくにまくり)の予想を確実に良くした。誰が1着かの予想への上乗せは小さい
  • 予想サイトでは、まず検証の枠で記録し、1レース1画面の「競艇新聞」で見られるようにした

よくある質問

展開予想は当たりますか?

「必ず当たる」ものではありません。たとえば「まくり40%以上」と出たレースでも、実際にまくりで決まったのは43.5%です。確率の高いレースほど起きやすい、という目安として使ってください。

選手タグの「差され」「捲られ」は、選手の評価ですか?

いいえ。1コースで差しやまくりの艇に負けた割合が、全選手の中で高いという記録上の事実だけです。性格や調子の評価ではありません。

展開予想を使えば舟券で勝てますか?

展開予想は「どう決まりやすいか」の目安で、回収率を約束するものではありません。展開を条件に買い目を変える方法も検証していますが、今のところ回収率が上がる結果は出ていません。


TAKENOKO BOAT では、全レースのAI予想と、外れも含めた公開成績を毎日載せています。1レースを1画面で見られる 競艇新聞、毎日の予想は TAKENOKO BOAT、検証の記録は 研究・検証 からどうぞ。

この記事の数字は、ボートレース公式の過去データを集計・検証したもので、実際の舟券の購入成績ではありません。将来の的中や回収率を保証するものではありません。

舟券の購入はご自身の判断と責任でお願いします。20歳未満の方は舟券を購入できません。

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