愛され系名馬ナリタトップロード

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愛され系名馬ナリタトップロードの現役時代のまとめです。

ナリタトップロードのプロフィール

  • 父:サッカーボーイ
  • 母:フローラルマジック(母の父:Affirmed)
  • 主戦騎手:渡辺薫彦
  • 調教師:沖芳夫 (栗東)
  • 馬主:山路秀則
  • 生産者:佐々木牧場
  • 1996年4月4日生まれ 牡馬

サッカーボーイの代表産駒でアドマイヤベガ、テイエムオペラオーのライバルで1999年クラシックの3強を形成する。そして何よりも多くの競馬ファンに愛されたアイドルホースである。

その要因は派手で見栄えのする馬体、主戦騎手の渡辺薫彦と調教師の沖芳夫の師弟関係、古馬になって超大活躍したテイエムオペラオーと和田竜二の対比によるものであろう。晩年はG2では圧勝してG1ではいまいちとなってしまう愛されキャラとなり、前述の1999年クラシック組では最も人気の高かった馬である。

通算成績は30戦8勝[8-6-8-8]

主な勝ち鞍は菊花賞、阪神大賞典連覇、弥生賞、京都記念、京都大賞典。G1ではダービーと天皇賞秋で2着、3着は皐月賞と天皇賞春の3年連続、ジャパンカップである。

デビューまで

主戦騎手となる渡辺薫彦は当時4年目で年間最高勝ち数は2年目に挙げた24勝、ナリタトップロードがデビュー前で80勝に満たない3流騎手である。

沖厩舎は年間20勝前後でエリモシックでG1勝ちをするなど関西の中堅厩舎である。渡辺薫彦は沖厩舎の所属騎手だ。沖厩舎の馬には専属騎手である渡辺薫彦を乗せる事は全く問題がない。これより前にもロングシコウテイやバンブーピノなどのオープン級の馬をデビュー間もない渡辺薫彦を乗せてG1に挑んでいる。

馬主の山路秀則はナリタブライアンなど当時毎年のようにクラシックの有力馬を所有する一流の相馬眼を持っている馬主。そんな彼には一つの確固たる方針があった。それは馬の事で厩舎に口出しせずに好きなようにやらせていたという事である。だから三冠馬ナリタブライアンのローテーションにも最後のレースが1200mの高松宮杯となったのだ。ナリタトップロードでも同様に後に物議を呼ぶことになる鞍上問題に関しては全く口出しをしていない。

サッカーボーイ産駒の期待馬ということで当時クラシックの有力馬がデビューする12月の阪神開催1週目の芝2000mの新馬戦でデビューする。この時代の12月阪神開催では関西のクラシック有力馬がデビューすることが多く、ダンスインザダークやロイヤルタッチにスペシャルウィークなどがこの開催でデビューしている。この後もアグネスタキオンとゴールド、ディープインパクトなどの名馬も続いている。

そんな有力馬の集まる新馬戦で堂々と一番人気に推されたナリタトップロードは後方から競馬を進めるも先団から伸びたマイネルサクセスを捕えきれずに2着に敗戦してしまう。

折り返しの新馬戦では2番手から競馬を進めて逃げ馬をきっちり交わして初勝利を収める。

クラシック前まで

年が明けて福寿草特別(京都芝2000m)は素質馬が集まる一戦だった。一番人気は名牝スカーレットブーケを母に持つサンデーサイレンス産駒スリリングサンデー、2番人気も同じくサンデーサイレンス産駒で新馬戦を勝ったばかりのトゥザヴィクトリー。鞍上はスリリングサンデーにフランスの名手オリビエ・ペリエ、トゥザヴィクトリーには日本のトップジョッキー武豊だ。それに次ぐ三番人気に渡辺薫彦鞍上のナリタトップロードである。

レースは1番人気のスリリングサンデーが逃げ切り、2番手のトゥザヴィクトリーがそのまま2着の前残りでつまらない結果となったが、3着には後方からいい脚で迫ってきたナリタトップロードが入選する。この中でどれが一番クラシックに向けていい競馬をしたかというとナリタトップロードである。この真価は次走のきさらぎ賞で問われることとなる。

そのきさらぎ賞では一頭の馬が圧倒的な人気を集めていた。デイリー杯を勝ち朝日杯で2着に入っていた外国産馬のエイシンキャメロンである。この時の評価はクラシックには出れないが世代ではトップクラスで、当時丸外ダービーと言われていたNHKマイルCでは有力と思われていた。鞍上は武豊で1.3倍の圧倒的な支持を集めていた。ナリタトップロードはそれに次ぐ2番人気である。レースは先に抜け出したエイシンキャメロンとナリタトップロードの叩き合いになり、クビ差でナリタトップロードが先着する。この勝利でナリタトップロードは一躍クラシック候補になる。そしてこの勝利は渡辺薫彦にとっては初重賞制覇となった。

続く弥生賞ではクラシックの本命級、武豊が惚れ込んでいるアドマイヤベガが出走してくる。当然1番人気はこちらである。2番人気にナリタトップロード。しかし後方から追い込んでくるアドマイヤベガを尻目に中団から先に抜け出したナリタトップロードが抑えきって1着。クラシックの本命相手に堂々たる勝ちっぷりでこちらがクラシックの最有力候補となる。ちなみにこの時の渡辺薫彦は100勝もしていない騎手である。

当時からクラシック級の大レースは新人騎手は下ろされて、勝てそうな実績ある騎手に乗り替わるのが普通であった。しかし渡辺薫彦で結果を出してきた以上、乗り替わる理由もないため継続して皐月賞に騎乗する。

皐月賞からダービー

皐月賞は武豊が乗るアドマイヤベガが一番人気。負けてもその鋭い末脚と、2冠馬ベガにサンデーサイレンス産駒という血統と当時は武豊が乗ると何でも人気になった時代背景もあり当然であった。2番人気にナリタトップロードで3番人気にマイネル軍団秘蔵のマイネルプラチナム、鞍上は木幡軍団の父親の木幡初広である。穴人気でデビュー4年目の和田竜二というペーペーが乗るテイエムオペラオーが、前走の毎日杯の勝ち方がちょっと良くてクラシック登録が無いのに200万円払って追加登録して出走してきたヤル気が見込まれて5番人気だった。

レースは有力馬の皆さんは中団で仲良く走っていたところを大外から和田竜二鞍上のテイエムオペラオーが超絶な脚で大外ぶっこ抜いてクビ差圧勝。ナリタトップロードは人気を背負った馬の中では一番まともに力を出して3着。なお2着には同馬主のオースミブライトであった。一番人気のアドマイヤベガは末脚発揮できず6着に敗れる。マイネルプラチナムはいいところなく9着だった。

この結果により、一番人気で掲示板にも乗れずに負けた武豊がバッシングされて、2番人気で僅差の3着となった渡辺薫彦はむしろよく頑張ったという評価であった。よくわからない和田竜二とテイエムオペラオーが彗星のごとく現れ、それも渡辺薫彦と同じような関西の無名の若手騎手であったので、世代交代なのかと世間様も納得していた感じであった。

続くダービーではアドマイヤベガとナリタトップロードとテイエムオペラオーが完全に人気を分け合う3強オッズであった。この頃には渡辺薫彦の好青年っぷりも知れ渡っていた為、見た目のかっこいいナリタトップロードとのコンビは特に若い女性ファンの間で人気になっていた。その為かわずかにナリタトップロードが1番人気となる。関西の下級条件戦に詳しいファンは渡辺薫彦なんてとてもじゃないけど信用できなかったが。

このダービーは武豊の独壇場で、早めに仕掛けるテイエムオペラオーとそれに釣られるナリタトップロードを見ながら追い出しを我慢したアドマイヤベガが末脚一閃差し切り勝ち。ナリタトップロードは善戦するもクビ差及ばず2着。ダービーの舞台では勝ちを知る(スペシャルウィークで去年知ったばかりだが)武豊に敵わなかった。それでも3着に負けたテイエムオペラオーの和田竜二よりは渡辺薫彦の方がダービー制覇に確実に近づいていた。

菊の栄冠

夏を越して京都新聞杯(今の番組表でいうところの秋華賞の週)で始動する。ここでもアドマイヤベガとの再戦となるも、地力ではナリタトップロードの方が上と見込まれて僅差の1番人気に支持される。しかしここでもアドマイヤベガの強烈な末脚に屈してしまう。それでも僅かクビ差と展開一つで逆転可能な差であった。

続く菊花賞では前哨戦で勝利を飾ったアドマイヤベガが1番人気、古馬相手に京都大賞典3着のテイエムオペラオーが2番人気だったが、ナリタトップロードも差が無い3番人気だった。クラシックの最終戦で無冠で終わる事の出来ないナリタトップロードにとっては負けられない一戦である。

レースは先団にいたナリタトップロードが4角先頭の強気の競馬で直線で猛追するテイエムオペラオーとサイレンススズカの弟ラスカルスズカを退けクビ差で菊花賞制覇。アドマイヤベガは6着だった。

こうしてデビュー5年目の渡辺薫彦が初G1制覇。沖厩舎にとってもエリモシック以来のG1制覇であるが、ここまで我慢して起用してきた弟子の渡辺薫彦とのG1制覇は格別な思いがあったであろう。

なお、ここでアドマイヤベガは怪我で引退となってしまう。

古馬との戦い

自走の有馬記念はとんでもない豪華メンバーが揃う伝説の有馬記念であり、古馬の強豪スペシャルウィークとグラスワンダーとメジロブライトにみんな大好きステイゴールドが出走。クラシック組からはナリタトップロードとテイエムオペラオーと同期のNHKマイルC勝ち馬シンボリインディが参戦した。ナリタトップロードは4番人気で、前走でステイヤーズSを負けてしまったテイエムオペラオーより評価されていた。

この有馬記念の結果は多くは語らないが、テイエムオペラオーが善戦の3着でナリタトップロードは2番手で競馬を進めるも古馬の厚い壁にはじき返される7着と生涯初の大敗を喫してしまった。

以降は古馬との戦いというかテイエムオペラオーとの戦いとなる。

テイエムオペラオーに挑み続けた世紀末

京都記念で始動するもテイエムオペラオーにクビ差完敗。

阪神大賞典に出走するもテイエムオペラオーの3着。2着はラスカルスズカ。

春の大目標、天皇賞春ではテイエムオペラオーの3着。2着はラスカルスズカ。

宝塚記念(勝馬テイエムオペラオー)には出走せず早めに秋に備える。

秋は京都大賞典で始動するもテイエムオペラオーにアタマ差完敗。

この年まで1番人気が何故か勝てないジンクスのある天皇賞秋でリベンジを試みるも5着敗戦。(1着はテイエムオペラオー)

久しぶりに重賞を勝ちたいという事でジャパンカップではなくステイヤーズSに挑むも1番人気で4着。ステイヤーズSは前年のテイエムオペラオーも敗れており、G1級の能力を持っていても簡単に勝てないレースだという事を証明してしまった。

ついにここでデビュー以来ナリタトップロードに騎乗し続けてきた渡辺薫彦は下ろされてしまう。陣営もとうとうかばい切れなくなってしまったのだ。

続く有馬記念では沖厩舎が勝負の采配の時に起用されることが多い関東の名手的場均。鞍上超強化という事で3番人気に推されるもいいところなく9着に敗れてしまう。なお勝馬はテイエムオペラオーであった。

21世紀になって再出発

そろそろ久しぶりに重賞を勝ちたいという事で古馬2年目となったこの年も京都記念に出走する。しかし格下相手のマックロウの強襲に敗れる。

ここで陣営はひとつの英断を下す。的場均よりも渡辺薫彦の方がナリタトップロードに合っているのだと。

その期待に応えるかのようにナリタトップロードは復活の勝利を挙げる。菊花賞以来の勝利は8馬身差の圧勝だった。やはりナリタトップロードには渡辺薫彦の方が合っているのだ。誰もがそう確信し、今度こそ打倒テイエムオペラオーの期待を籠める。

また、テイエムオペラオーは春の復帰戦の大阪杯を4着に敗れていた。世紀末覇王も世紀末が終わればただの馬、誰もがそう考えていた。

そして本番の天皇賞春はテイエムオペラオーの完勝。2着はメイショウドトウで3着にナリタトップロードであった。

今年も宝塚記念は回避して、復帰戦の京都大賞典でテイエムオペラオーを確実に仕留めるべく調整する。

宝塚記念はテイエムオペラオーが敗れる。勝ったのは2着続きだったメイショウドトウだった。テイエムオペラオーはやっぱり衰えてきているのであった。

京都大賞典で本気を出すべく調整してきたナリタトップロードはテイエムオペラオーに挑む。しかし最後の直線でテイエムオペラオーとステイゴールドとの叩き合いになるも、ステイゴールドに進路を阻まれたナリタトップロードは落馬してしまう。入線はステイゴールドが1着だったが、失格となりテイエムオペラオーだけが生き残り1着となる。

アクシデントのあったナリタトップロードは天皇賞秋を回避しジャパンカップへ出走。ジャングルポケットの3着となる。敵はテイエムオペラオーだけではなく新世代も台頭してきたのである。

続く有馬記念は大敗してしまう。どうも中山が合っていないかもしれない。しかし東京競馬場は改修工事に入り翌年の秋のレースは全て中山競馬場での代替開催が予定されていた。

現役ラストシーズン

テイエムオペラオーもメイショウドトウ引退して同世代のクラシックを分け合った馬はナリタトップロードのみとなった。テイエムオペラオーさえいなくなればタイトルを奪取するチャンスと今年はヤル気になっていた。

始動戦の京都記念も60㎏を背負いながら下の世代の挑戦を退けて勝利、続く阪神大賞典でも前年の年度代表馬ジャングルポケットを抑えて勝利。依然として衰えぬ実力を示す。

天皇賞ではジャングルポケットとマンハッタンカフェの2000年世代と人気を分け合うも、一番人気を奪取。菊花賞以来のG1制覇の大チャンスとなる。しかし長距離の鬼マンハッタンカフェにわからされてしまい、春の天皇賞は3年連続3着とナイスネイチャ以来の同一G1で3年連続3着の記録を作ってしまう。

しかしこの後、渡辺薫彦が落馬してしまい戦線離脱。秋は四位洋文が乗る事となる。

秋の復帰戦の京都大賞典は3度目の正直で制覇。この時の相手の2着ツルマルボーイと3着タップダンスシチーは後にG1を制する。

そして6歳になって初めて秋の古馬王道3連戦を完走する。全て不向きな中山でありながら、天皇賞秋は3歳馬シンボリクリスエスに敗れるも半馬身差の2着と好走。中山案外行けるじゃんと期待されるもジャパンカップは惨敗する。

引退レースとなる有馬記念ではファン投票1位に選ばれ渡辺薫彦も復帰する。改めてこの馬と渡辺薫彦とのコンビの人気の高さを示すこととなる。レースの結果は4着とこれまで惨敗し続けていた有馬記念で初めて掲示板を確保した。シンボリクリスエスには負けたけど1番人気のファインモーションは負かしたし十分でしょう。

引退後

引退後は社台スタリオンで種牡馬となる。社台出身の馬以外で社台スタリオンで種牡馬になるのは一流馬しかなれないとされており、サッカーボーイの後継種牡馬として大きな期待を集めていた。

しかし3世代の産駒を残しただけで心不全により急死。主な産駒はベッラレイアでフローラSを勝ちオークス2着など活躍である。

なお渡辺薫彦は重賞を通算11勝しているが、うち6勝がナリタトップロードである。今では調教師になりシゲルピンクダイヤやダブルシャープなどで渋く活躍している。

総括

ナリタトップロードは平凡な騎手である渡辺薫彦の前に現れた奇跡で漫画のような馬である。調教師が沖芳夫でなければクラシックを待たず福寿草特別の段階で乗り換えられていた可能性が高く、馬主が山路秀則氏でなくても同様に早い段階で乗り替わっていただろう。そして渡辺薫彦はナリタトップロードに乗っている間は決して恥ずかしい騎乗はしていないのである。それ以外ではスピード馬バンブーピノとかで出遅れたりしていたが、ナリタトップロードで明確な失敗はしていない。渡辺薫彦が原因で負けたのではなく、相手が悪い、つまり生まれた時代が悪かったのである。その証拠に的場均や四位洋文が乗った時も成績はあまり変わっていない。

また、ライバルのテイエムオペラオーが若手騎手とのコンビで勝ちまくっていた為、よく比較されるが和田の方が微妙な騎乗は多かった。しかしその後の騎手人生では和田の方が明らかにうまい。渡辺薫彦は無難な騎乗しかできなかったからナリタトップロードは勝ち切れなかったかもしれない。でも渡辺薫彦が好青年だったからクリーンでスポーツマンシップ溢れる人気が出たのであろう。反対に和田は調子に乗っている若者のように見えて悪役扱いされることが多かった。でも今では再評価されて立派な名馬扱いである。和田さんも長い間G1に勝てていなかったがミッキーロケットで宝塚記念を勝ててよかった。

実際にナリタトップロードがどれほど強かったのかというとG2で圧勝できる程度には強く、古馬になってからG1を勝てなかったのは得意条件でG1が無かったからかもしれない。特に宝塚記念に一回も出走していないのが疑問で阪神大賞典を連覇しているが実はステイヤーではなく阪神巧者だった可能性もある。重馬場になりやすい宝塚記念は不向きの可能性もあるが。大跳びなので広い良馬場コースがベストなのは変わらないのでジャパンカップ一本に調整していればあるいは、という感じか。それでも相手がテイエムオペラオーの時はともかく、翌年はジャングルポケットなので厳しい。やはり生まれた時代が悪い。

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