昭和47年クラシックの戦い

世代

昭和中期にハイレベルと謳われた昭和47年クラシック世代、通称「花の47年組」のまとめ記事です。ロングエース、ランドプリンス、タイテエムの関西3強に関東の秘密兵器イシノヒカルを交えた戦いとウマ娘化に立候補しているタイテエムさん他ライバル関係についての考察があります。アイキャッチ画像はメイタイファームさんよりタイテエムの制した天皇賞春の盾です。

クラシック前

昭和46年の年末あたりから馬インフルエンザが発生し、特に関東で大流行した。その為、昭和47年初頭は関東で競馬2か月間の開催が中止され、クラシック路線も大幅な延期となった。皐月賞が5月28日、ダービーはなんと7月9日と例年より一カ月以上遅い開催となる。こうなると当然、関東馬はろくに調教も積めずに予定通りの調整を積むことができた関西馬と比べて大きく不利となった。

そんな関西馬の中から一頭の有力馬が現れる。その名はヒデハヤテ。昭和46年10月にデビューを迎えると2歳戦では4戦3勝、阪神3歳Sを8馬身差で圧勝した。(このサイトでは年齢は現在のものに変換しているのでレース名がズレるので悪しからず)3歳になってからもきさらぎ賞、京成杯を連勝するなど、クラシックの有力馬と称されていた。あまりの強さに皐月賞の前哨戦となるスプリングSは5頭立てとなる。みんなヒデハヤテとの対決を避けた為だ。インフルエンザの影響があったかもしれないが、1週間後の弥生賞が9頭立てだったので、ヒデハヤテの強さに怯えた説が有力である。

しかしそのスプリングSを勝利したのはタイテエムだった。デビュー戦でヒデハヤテに敗戦したが、年明け以降は馬が変わったように成長し条件戦を連勝し東上、ついには有力馬であるヒデハヤテを打ち破りクラシックの有力馬に名乗りを上げた。なお、2着に敗れたヒデハヤテは故障し無念の戦線離脱となる。

その翌週に行われた弥生賞でも関東の有力馬を関西馬二頭が駆逐する。無敗の良血馬ロングエースと新種牡馬テスコボーイ産駒のランドプリンスである。インフルエンザの影響があったとはいえ、関東の新鋭を全く寄せ付けない二頭、特にロングエースはまさにクラシックの最有力候補となるのであった。

皐月賞

こうして皐月賞では関西馬の3頭が上位人気を形成することになる。この時の3頭の戦績は以下の通りである。ついでに関東馬で一番有力馬とされたのはイシノヒカルであった。

ロングエース:5戦5勝、弥生賞勝ち、1番人気

タイテエム:6戦4勝、スプリングS勝ち、前走で有力馬ヒデハヤテを破る。2番人気

ランドプリンス:13戦5勝、弥生賞と京成杯2着、3番人気

イシノヒカル:8戦4勝、重賞未出走、名手の加賀武見が騎乗

レースは先行するロングエースをタイテエムがぴたりとマーク。その後ろをランドプリンスが走る形。最後の直線では馬場のいい外側にロングエースとタイテエムが進路を取るが、真ん中を通ったランドプリンスが力強く抜け出し快勝。2着は中団からしぶとく伸びた関東馬のイシノヒカルが意地を見せた。ロングエースは2馬身離された3着。タイテエムは接戦ながら7着に敗れる結果となった。

日本ダービー

そして7月9日、通称七夕ダービーを迎える。間に皐月賞馬のランドプリンスは平場のオープンを走り2着、タイテエムはNHK杯を走り3着に敗れている。この辺りは調教替わりにレースに走っているのだ。ちなみにロングエースとイシノヒカルはダービー一本に絞って調整してきた。ここにNHK杯を勝ったランドジャガーとハクホオショウも有力馬として名乗りを挙げるも、人気はやはり関西3強が集めることとなった。

27頭の優駿が集まった第39回日本ダービーは最後の直線で抜け出した有力3頭の叩き合いになる。内にロングエース、中にタイテエム、外にランドプリンスの戦いは内から僅かにロングエースが抜け出し、見事一番人気に応えダービー馬の栄冠に輝いた。

皐月賞馬ランドプリンスはクビ差の2着、2頭に挟まれたタイテエムは頭差の3着、皐月賞2着のイシノヒカルは後方にいる脚質が27頭という多頭数では不利になったかのか6着に敗れる。なおこの時のロングエースの勝ちタイム2:28.6は当時のダービーレコードであった。

菊花賞

ダービーの後、3強はそれぞれ例年より短い夏休みに入った。イシノヒカルは夏の残念ダービー、日本短波賞(今のラジオNIKKEI賞)に出走するもスガノホマレに差されて2着に敗れ、その後休養に入る

秋になり3強も実践に復帰したが、春とは大きく勢力図が変わっていた。神戸新聞杯ではランドプリンスとタイテエムが直接対決をするもタイテエムが勝利しランドプリンスが2着。続く京都新聞杯では3強が揃い踏みするがタイテエムが勝利、ランドプリンスは4着、休み明けのロングエースは精彩を欠き6着に敗れる。前哨戦ではタイテエムが成長を見せ、菊花賞の最有力馬と評されるようになっていた。

また、関東の雄イシノヒカルは順調さを欠いた為に復帰に手間取り、菊花賞へ出走できるかどうかも怪しい状況だったがなんとか菊花賞の前週のレースでようやく復帰し勝利を挙げていた。

本番ではトライアル2連勝のタイテエムが一番人気となる。ランドプリンスが二番人気、本調子ではなさそうなロングエースが3番人気で強行軍が嫌われたイシノヒカルは4番人気だった。不良馬場で行われたレースは、手応えの怪しい他の3強を尻目にタイテエムが最終コーナーで先頭に躍り出て直線を抜け出す。しかしこのまま押し切り濃厚で勝利目前といったところで、向こう正面では後方2番手に待機していたイシノヒカルが強襲、並ぶ間もなく一気の差しきり勝ちを収める。タイテエムは3強との対決には勝利したが、肝心の菊花賞馬の栄誉は思わぬ形で奪われてしまった。なお、3着は重賞未勝利ながらセントライト記念と京都新聞杯をともに3着と好走していたソロナオール。ランドプリンス4着、ロングエースは5着だった。

4強その後

ダービー馬ロングエースと菊花賞馬イシノヒカル(と菊花賞3着のソロナオール)はそのまま有馬記念で古馬と対決。古馬の有力どころは天皇賞馬のメジロアサマ(メジロマックイーンの祖父)、ベルワイルド、メジロムサシなどの古豪が揃っていた。しかしこの年のクラシック世代の強さを見せるがごとく、イシノヒカルが2着にメジロムサシをなで斬りし年度代表馬のタイトルも搔っ攫う。3着にソロナオールが入選しこの世代の層の厚さも示した。ただ、ロングエースはいいところなく8着と惨敗し、このレースを最後に引退となる。勝ったイシノヒカルも強行軍が堪えたのか屈腱炎を発症し、長期休養の後1戦するも再発、そのまま無念の引退となってしまった。なお、3着のソロナオールはその後は条件戦をコツコツ走るも卒業することなく引退となっております。

古馬となったランドプリンスとタイテエムは当然のように天皇賞を目指すこととなる。無冠に終わったタイテエムは今年度の出世を願い金杯に出走するも1番人気の4着。その後は前哨戦としてマイラーズカップを選び、ランドプリンスとの対決となるがタイテエムが5番人気の低評価を跳ね返し勝利。久々のマイル戦に戸惑ったのかランドプリンスは5着に敗退する。続く天皇賞では堂々の1番人気に推されたタイテエムが見事に完勝、念願のタイトルを手にすることとなる。。ランドプリンスはいいところなく13着。名脇役のスガノホマレは競走中に故障を発症してしまう。

天皇賞で惨敗したランドプリンスはそのまま引退し、天皇賞の勝ちっぷりが良かったタイテエムの時代が訪れるかと誰もがそう考えていた。しかし、次走の宝塚記念でハマノパレードにアタマ敗れてしまう。ハマノパレードも強い馬だから仕方がない。しかし悲劇はタイテエムがゴール入選後に発生、鐙が切れてしまい、騎手の須貝彦三が投げ出されてしまいタイテエムも転倒してしまう。この時にアキレス腱を損傷してしまい現役続行不能、そのまま引退となってしまった。

なお宝塚記念の勝者ハマノパレードもこの後将来が嘱望されていたが次走の高松宮杯で勝利寸前で落馬故障発生、そのまま屑殺所送りにされてしまうという事件が発生する。

同世代の他の名馬

タニノチカラ:天皇賞秋、有馬記念

ストロングエイト:有馬記念

グランドマーチス:中山大障害4連覇、2022年現在障害唯一の顕彰馬

スガノホマレ:重賞4勝、レコード勝ち5回のスピード馬

ハマノパレード:宝塚記念、その次のレースの高松宮杯で故障後屑殺

ナオキ:母のエイトクラウンと共に宝塚記念を母子制覇

個人的な考察

関西3強陣営はお互いが、例年であれば3冠馬になれる存在だというお話がありますが、実際にどれだけ強かったのかを個人的に考察していきます。

2歳からクラシック直前まではヒデハヤテが強く、ランドプリンス以下の有力馬に勝ちまくっていたところ、年明けデビューのロングエースが一戦一戦確実に勝利し、クラシックの有力馬となる。順調であればヒデハヤテとロングエースの2強扱いだったのではないか。

タイテエムは2勝目が3月と例年のスケジュールであれば関東遠征を考えるには遅く、皐月賞に間に合わずダービーのみの参戦だっただろう。スケジュールが後ろ倒しになったからこそ、スプリングSに出走してヒデハヤテを引きずり下ろしクラシックの有力馬となった。しかし3歳春の完成度ではロングエースに及ばなかった為、皐月賞とダービーでは敗れたのだろう。秋以降は他の2強が劣化し自身が成長したため、3強では最強となったがイシノヒカルとどっちが本当に強かったかは微妙なところである。

ランドプリンスは調教替わりにレースを使っていたようなローテーションの為、クラシック目前まではただの物差し馬であり、対決した陣営からしては勝負付けの済んだ馬扱いされていたのではないだろうか。特にロングエース陣営は弥生賞でちぎり捨てていたため、皐月賞ではヒデハヤテに勝っていたタイテエムの方をマークしていたため、ランドプリンスに出し抜けを許したと思われる。逆にランドプリンス陣営は本気で走らせれば勝機があると見込んでいたのだろう。3歳春になってからは弱い馬には負けていない。ただ全力同士であればロングエースに分があったと思われる。なお、長距離適正はあまりなかった模様。

ロングエースはエリート血統であり世代ナンバーワンの実力はあった、しかし抜けたナンバーワンではなかった。それでもダービーまでの戦績は立派であり、ダービー以後は調子が戻らなかっただけであろう。さっさと引退したのも種牡馬としての期待が高かったのではなかろうか。ちなみに種牡馬としてはボチボチの成功を収め、白毛馬ハクタイユーを通じて地味に最近までサイアーラインを残していた。

イシノヒカルはインフルエンザの影響がなければ春のクラシックでも勝負になっていたかもしれない。ただし、後ろからの脚質ではフルゲート28頭のダービーを制するのはやはり難しかったのではなかろうか。有馬記念後の屈腱炎さえなければ天皇賞も制して時代の名馬となっていた可能性が高いだけに、いろいろと運の無い馬である。それでも超名馬であるが。

これら4頭の順位付けをすると、以下のような力関係だったと思われます。

ダービー迄:ロングエース>ランドプリンス>イシノヒカル>タイテエム

菊花賞以降:イシノヒカル>タイテエム>ランドプリンス>ロングエース

古馬との戦いはイシノヒカルの有馬記念とタイテエムの天皇賞春、及び他のこの世代の馬達で有馬記念2勝、天皇賞1勝という結果を見てもレベルの高い世代だったことは間違いありません。ただこの時代の競走馬はピークが短い馬が多く、他の要因もあり力関係も測りかねる為、何とも言えませんね。世代間の比較は他の世代を見てからとさせていただきます。

ウマ娘となるなら?

そもそもこの世代を取り上げたのはタイテエム陣営がウマ娘になりたいといったからであり、そのキャラ付け要素を少しまとめてみます。

ロングエース

兄弟に重賞勝ち馬やクラシック好走馬がいる良血馬。名前の由来は野球のエース。愛称は「重戦車」

ダービー制覇を義務付けられたウマ娘一家でムキムキな野球好きキャラ。ポジションは名前の通りピッチャーで一人で全試合投げ切りたいという責任感の強い昭和のエースタイプ。兄弟みんな野球好きで将来はチームを作るのが夢。メジロのウマ娘とキャラかぶりしそうな感じですが、あちらは観戦する側でこちらはやる側です。大きな違いです。

ランドプリンス

テスコボーイ産駒なので良血っぽいけど初年度産駒で評価が定まる前であり母系がサラ系というむしろ駄血統扱い。おかげで種牡馬として不人気でした。馬柱を見ても雑草扱いっぽいし愛称は「野武士」。

貧しい家出身で一人称が拙者な武士少女キャラ。自分の実力を示すべくロングエース他の有力どころに喧嘩を吹っ掛ける血の気の多いタイプ。

イシノヒカル

地味な血統と馬格で馬主が決まらず安値で取引される。インフルエンザの影響で病弱と不遇な境遇。でも実際レースになったら後方からまくりという破天荒なレースで勝ってしまう。トラウマを抱えまくってて自分に自信ないけど、というとライスシャワーちゃんタイプになるのでもういっちょキャラ付けが必要か。

ゲームセンター嵐あらしの主人公が同馬主のイシノアラシから名前を取っているので、それとの絡みを示唆していくのもいいでしょう。

タイテエム

話を作るうえではこの馬が一番ウマ娘にしやすそうです。生まれはイギリスからの持ち込み馬でエイシンフラッシュのように異国から来たウマ娘。派手な流星を持っているグッドルッキングホースなのでゴールドシチ―のようなモデルなりパンクでファンキーなファッションキャラでもよし。良血で高値の為なかなか買い手がつかなかったエピソードもあるのでイギリスらしい高いプライドを盛ったキャラになりそうです。

クラシックでは善戦止まりで古馬になって花開くストーリーもゲームシステムとマッチしている。エピソードの掘り起こしも陣営が乗り気なのでいっぱい出てくるので期待ですね。

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